2026年9月29-30日に, 第91回ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究発表会が, 静岡大学 浜松キャンパスにて開催されます.我々は本研究会にて, 以下の論文の発表を行います.
1. 様々な計測状況下における手首装着型UWBを用いた呼吸波形推定
近年,UWBを用いた呼吸センシングが注目されていますが,従来研究の多くは環境設置型であり,測定場所が限定されます.そこで本研究では,UWBを手首に装着し,場所に依存しにくい呼吸波形計測を目指します.
手首に装着して利用する場合には,手の位置や姿勢によってUWBと胸部の位置関係が変化することで,呼吸成分が現れる信号の特徴も変化するという課題があります.
本研究では,手の位置の違いによって生じるUWB信号(時系列複素信号)の位相が変化することに着目し,その変化に応じた位相を補正することで呼吸波形の復元精度が向上するかを検証しました.さらに,セッション間,ユーザ間,活動間における呼吸波形推定の汎化性能を評価しました.
正解データを用いて,手の位置によって生じるUWB信号の位相を補正することで,セッション間,ユーザ間,活動間のいずれにおいても呼吸波形の復元性能が改善し,既存手法と比較しても高い精度を確認しました.これらの結果から,手の位置に伴って生じる信号の反転が,手首装着型UWBによる呼吸波形推定の性能低下の一因であることを示しました.
2. Dual-Timescale Embeddings from CSI Amplitude for Cross-Domain WiFi Activity Recognition
近年,Wi-Fi信号を用いた人の行動認識が注目されています.この技術は,カメラを必要とせず,既存の無線設備を活用して人の動作を認識できるため,スマートホームや見守りシステムなどへの応用が期待されています.なかでも,学習時とは異なる場所,人物の向き,周囲環境においても認識できる「クロスドメイン行動認識」は,実環境への導入に向けた重要な課題です.
従来のクロスドメインWi-Fi行動認識では,環境変化の影響を抑えるため,CSIからドップラー周波数シフト(DFS)や身体座標系速度プロファイル(BVP)などの動作表現を構成する手法が多く用いられてきました.しかし,これらの特徴量を生成するには,追加の計算コストが必要です.一方,比較的簡単に利用できるCSI振幅は,異なるドメイン間での認識性能に課題があるとされてきました.
本研究では,CSI振幅から簡単な処理によって高い認識性能を実現する,クロスドメインWi-Fi行動認識手法を提案します.提案手法の特徴は,異なる時間スケールの変化を捉える「二重時間スケール埋め込み」です.一方の経路では隣接する時刻間の細かな変化を捉え,もう一方の経路では局所的に平滑化した信号から,より緩やかな時間変化を捉えます.これらを組み合わせることで,CSI振幅に含まれる動作の特徴を効果的に抽出します.
Widar3.0データセットを用いて,場所・向き・環境をまたぐ条件で評価した結果,提案手法は平均認識精度95.20%を達成しました.また,BVPやDFSを用いる既存手法と比較してパラメータ数を大幅に抑えながら,同程度の認識性能を実現できることを確認しました.
本研究の成果は,複雑な特徴量生成に頼らず,CSI振幅から高精度なクロスドメイン行動認識を実現できる可能性を示すものです.計算資源の限られたエッジデバイス上で動作するAIアプリケーションをはじめ,スマートホームや見守りシステムへの展開が期待されます.
発表情報 (詳細プログラム)
2026年9月29日(火) 13:10〜14:30 セッション2-A:生体計測技術とインタフェース
様々な計測状況下における手首装着型UWB を用いた呼吸波形推定
芝塚 育大 (東京科学大学), 坪内 孝太 (LINEヤフー株式会社), 西山 勇毅 (東京大学), 下坂 正倫 (東京科学大学)
2026年9月30日(水) 12:50〜14:10 セッション5-A:屋内センシングとスマート空間基盤
Dual-Timescale Embeddings from CSI Amplitude for Cross-Domain WiFi Activity Recognition
Nguyen Tien Dung (Institute of Science Tokyo), Tsubouchi Kota (LY Corporation), Nishio Nobuhiko (Ritsumeikan University), Shimosaka Masamichi (Institute of Science Tokyo)